QSWの新しいシステムへの移行
2018年3月28日、ケベック州政府はケベックスキルワーカープログラム(QSW)に関して、連邦政府のエクスプレスエントリーをモデルにした新しい移民申請管理システムを採用することを発表しました。QSWではMon Projet Québecというオンラインシステムを使って先着順で申請書が受付けられていますが、受付開始と同時に申請書が殺到しシステムが機能しなくなるなどの問題点が指摘されていました。新しいシステムではExpression of Interestと呼ばれるプロファイルを提出し、独自のポイントシステムで高いスコアを取得した候補者に申請の招待が送られるという、まさにエクスプレスエントリーで行われているのと同様のシステムが採用される見込みです。このように先着順をやめてポイントシステムで受理する申請書数をコントロールする方法は、BC州やマニトバ州などのノミニープログラム(PNP)でも採用されており、カナダの移民候補者選定方法の主流になりつつあります。
ケベック州政府は、QSWにおいて2018年8月15日までに最大5000の申請書を受け付けるとしていますが、現在Mon Projet Québecを使って申請できるのは、ケベック州の雇用主からジョブオファーを取得し政府から承認されているか、ケベック州の居住者に限られています。QSWではこれまで、教育、ジョブオファーの有無、職務経験、年齢、語学力、ケベック州滞在歴などの総合点が一定以上であれば要件を満たしたことになり、気長に待っていればケベック州の審査を受けることができました。今後新しいシステムが始まると、申請の招待を受けるためにより高いスコアを取得することが求められると予想されます。
PEQの意外なQC定着率
“学歴不問、職歴不問、年齢不問、ジョブオファー不要”、フランス語のB2(中級の上)レベルの証明と職業訓練校の指定プログラムを修了、またはケベック州で1年就労するだけで移民資格を得られるPEQ。一時期、中国、韓国、インドからカナダ移民の最短パスとして留学生の殺到したプログラムです。現在もこのプログラムは健在ですが、PEQの人気は以前ほどでなくなったといわれています。
PEQのフランス語B2 レベルの証明方法としては、TEFやTEFAQなどの公式フランス語試験の結果を提出したり、ケベック州政府が認可したフランス語コースでB2レベルの修了証を取得することなどが認められています。しかしながら、いくつかの学校のB2レベルのコースを修了した生徒のフランス語力が、実際にはB2 レベルに達していないのではないかとの疑惑がもたれ、2016年の終わり頃から本来は面接免除のはずのPEQの申請者が次々と面接に呼ばれる事態となりました。面接でB2 レベルに達していないと判断されると、一定期間中にフランス語の公式試験結果の提出を求められました。また、フランス語能力が著しく低い生徒の中には“虚偽申告”で5年間の再申請禁止を言い渡されたケースもあるということです。面接に呼ばれた生徒からはフェアではない、政府に裏切られたとの声も上がりました。
2017年に入ってからも面接は続けられ、8月にはセカンダリースクールの提供するいくつかのフランス語コースが不適格と判断されリストから外されました。かねてから“楽にB2の修了証がもらえる” という噂が留学生の間で広まっていたコースです。これと同時期に職業訓練校の運営体制が問題となってUPAC (the province’s anti-corruption unit) による監査が入り、これら一連の不祥事でこのプログラムの評判は著しく傷つけらることになりました。
それではこれからPEQはどうかわるのか。こうした悪評にもかかわらず、PEQによって永住権を取得した外国人は、既に就学や就労を通じて現地とコネクションを作っておりフランス語能力も高い、その結果、移民後もケベック州への定着率が高いと高く評価されています。2018年現在のケベック州の労働市場は極めて好調、雇用機会にあふれていることがメディアによって大きく伝えられる中、ケベック政府は今後も他州には見られないユニークなプログラムとして、PEQを継続する意向を強く打ち出しています。特に、ケベック州での就労とフランス語力をセットにしたストリームでは、対象となる就労許可書の種類が広げられることが予定されており、今後改めて注目されるプログラムになりそうです。