最近になって外国人一時就労者(Temporary Foreign Worker)を雇用する雇用主に対してサービスカナダによる任意のインスペクションが活発に行われるようになりました。Labor Market Impact Assessment(LMIA)を使って就労者を雇用する雇用主だけでなく、駐在員などLMIAを免除された就労者を雇用する雇用主にもその対象が広がっています。また、従来は書類による監査が中心でしたが、現在では外国人就労者に対するインタビューを含むオンサイト・インスペクション(立ち入り検査)もより頻繁に実施されています。
インスペクションの結果、Non-Compliance(不服従)と判定され、金銭的ペナルティーや一定期間外国人就労者の雇用を禁止される雇用主の数も増加し、数年前までは数件に過ぎなかった違反企業の数も、2019年3月31日時点で140の雇用主の名前が政府のウェブサイトにリストされています。https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/work-canada/employers-non-compliant.html
本稿では、長引くインスペクションへの対応で日常業務に支障が出たり、ネット上で会社名を公開されるいった不名誉を防止するために、インスペクションをスムーズに終わらせるための5つのTipsを、弊社が実際にクライアントのインスペクションに関わった経験をもとに整理しました。
1.就労時間数の明確な記録を残しておくこと
インスペクションで最も重要なの項目の一つが“約束した賃金を支払っているかどうか”です。LMIAがHourly Rateをもとに承認されている場合は、就労時間数が明記されていないペイロールレコードを提出すると、実際の就労時間数を証明するためのデータを追加で求められることがあります。
2.就労条件の変更は極力避けること
複数の就労場所を持つ場合でも、LMIA申請時に申告した場所で、申告した業務を遂行していることが必要です。予告なしで行われることもあるオンサイト・インスペクションに対応するためにもこれは必須です。また、賃金レベルも申告時と”Substantially the Same“であることが求められるため、就労ビザの期間中はたとえ昇給であっても僅かに抑えておくべきです。大幅な昇給はポジション自体が変わったと見なされるリスクがあります。
3. 州の労働法にも注意すること
インスペクションではLMIA申請時の条件だけでなく、雇用条件が州のLabor Standardに則っているかどうかも対象になります。州で決められた最大労働時間数、残業代の計算方法、有給休暇もしくはバケーションペイの支給、Statutory Holidayに就労させた場合の賃金計算等にも注意を払う必要があります。
4.Work Safety Insuranceまたはそれに準じる労災加入は必須
LMIAを使って雇用した外国人就労者は、職場の労災保険で保護されていることが必要であり、州法で定められている場合は、州政府の提供するWork Safety Insuranceに加入することが必要です。州によってはそれに準じる民間保険への加入を認めている場合もあります。
5.Low wageのポジション特有のRequirementにも注意
州の中間賃金より時給が低いLow Wage Positionで、雇用前にその外国人就労者がカナダ国外やカナダの他の都市に居住している場合は、カナダの職場までのラウンドチケット、またはケースによっては片道の交通費を負担する義務があります。また、就労開始後に州の健康保険が適用になるまでの間は、外国人就労者を民間の健康保険に加入させ、そのコストを負担する義務があります。