今回は最近活発に行われるようになった、外国人就労者を雇用する企業へのインスペクションについてです。
昨年末頃から外国人就労者を雇用する雇用主に対して、約束した就労条件が守られているかどうかのインスペクション (検査) が活発に行われるようになりました。以前はワークパーミット申請のために必要なLabour Market Impact Assessment (LMIA) の新規申請が引き金となって、過去に約束した条件の遵守状況の確認のために行われることが多かったのですが、最近では新規の申請とは無関係に、LMIAを発行したことのある雇用主に対してランダムに通知が送られてくるようになりました。また、LMIAのワークパーミットだけでなく、駐在員など雇用主の名前の入ったLMIA免除のワークパーミット保有者を雇用する企業に対しても、対象が広げられつつあります。さらに、まだ実施はされていないようですが、オンサイト・インスペクション (立ち入り検査) も計画されています。外国人就労者を雇用する企業にとっては思わず委縮してしまいそうな話です。
主な検査内容は、約束した通りのポジション、職務内容になっているか、就労時間や賃金が守られているか、州の労働・安全基準を遵守しているかです。特に賃金の支払いについては踏み込んだ検査が行われ、残業代、バケーションペイはもちろんのこと、ホリデーペイの計算まで問われる場合もあるので、これを熟知した会計士との連携が欠かせません。約束された報酬額と実際に支払われた金額との間に差異がある場合は、これを正当化するための説明を求められ、オフィサーが納得のいく説明ができなければ差額分の補填を求められることになります。通常、検査対象となる期間や外国人就労者は限定されますが、違反がみつかるとその対象が拡大される場合があるので注意が必要です。
昨年12月1日以降の違反に対してはペナルティーが厳しくなり、課せられる罰金は違反の種類や程度により1件あたり500ドルから100,000ドルまで、罰金額の合計は最大100万ドルに設定されました。また、外国人の雇用禁止期間も1年、2年、5年、10年と細かく設けられ、雇用を禁止された企業はその名前を政府のウェブサイト上で公開されることになります。但し、2016年2月現在、このブラックリスト上の企業は4社に留まっていることからも、不当な処分に対する訴訟を恐れて政府側も慎重になっているのがうかがわれます。
インスペクションによって外国人雇用の慣行が改善されることは、外国人就労者にとってはもちろん歓迎すべきことです。雇用する側にとっても、これまで平気で違反を繰り返し、外国人就労者を搾取し続けてきた雇用主が今後外国人就労者を雇用できなくなり、真っ当なビジネスを行っている企業がより公平な競争環境の中で優れた人材を確保できるチャンスが増えるのは良いことだと思います。