移民者数の数え方のトリック
2021年も残すところひと月半になりましたが、例年11月後半にもなると永住権の年間発行枠も消化されてイミグレーションオフィサーは早々とホリデーモードに切り替わります。ただ、今年は年間401,000人に永住権を発行という前例のない目標を掲げる中で、8月末時点でまだ約半数の222,000人にしか永住権が発行されていないということなので、オフィサーは休み返上でプロセスを続けるのか(たぶんそれはないと思いますが)、政府にはかなりプレッシャーがかかっていると思います。そのせいか、最近はカテゴリーによってはあまり重箱の隅をつつかずに永住権が速やかに発行されている印象もあり、申請者にとっては朗報です。
この永住権発行数のカウントの仕方について政府は明確に説明していませんが、ランディングを完了しConfirmation of Permanent Resident (COPR)が有効化されて移民のステータスになった人の数と解釈されます。パンデミック以降はカナダ在住者のランディングはバーチャルで行われるようになったのでCOPRの発行数と同義になります。以前プロセスの最後行われていたPRカード用の写真や最新のパスポートコピーを郵送するといった手続きが全てカットされた結果、最後のプロセスはかなり短縮されました。
政府はコミットした数字を達成しないと野党から批判されるので、とにかく数合わせに必死になっていますが、この数合わせてのために多くのリソースが割かれる一方で、その後に続くPRカードの発行のプライオリティーが下がっているのは残念なことです。IRCCのサイトによると発行まで現在平均89日かかっているということなので、COPRが下りた後もカナダの出入国が自由にできず、一度カナダ国外に出てしまった人は、Permanent Resident Travel Documentを申請して戻ってくるなど面倒なことになっています。またパンデミックの間にこのランディング、PRカード発行のプロセスがトライアンドエラーで何度か変更されたため、完全オンライン化される前にCOPRを発行され、写真を郵送した人の中にはその後半年も音沙汰がない例もあります。
移民者数増加は人手不足を解決するのか
パンディミックが終息の方向に向かい経済が急回復する中で、世界的にも人手不足が問題になっていますが、カナダは移民者数を増やすことによってこの問題を解決しようとしています。ただ、よくよく考えると現在エコノミッククラスの移民者の大半はカナダに居住し既に就労ビザで働いている人たちなので、このグループのステータスが一時就労者から移民に変わったところで労働者の頭数は変わりません。もちろん、早く移民になって100%コミットして働いてもらうことは国にとってのメリットであり、一時就労者にとっても、移民ステータスに変わることによって広範な特典を享受できることは歓迎すべきことです。ただ、それによってこの人手不足の問題を解決しようとするのは議論がずれているように思います。
頭数を増やすためには、カナダ国外からの移民を増やすべきでしょう。つまり、パンデミックが始まってからのこの1年半くらいエクスプレスエントリーの対象からはずれてしまっている、連邦スキルドワーカー、連邦スキルドトレードのドローを早急に復活する必要があると思います。
ちなみに2021年11月8日時点でスコア401以上をマークする約92,000人がエクスプレスエントリーのプールで待機してインビテーションを待っている状態です。パンデミック前の2020年1月29日には、この数字は61,000人程度でした。政府は既に大量のストックを抱えていることになります。ドローが再開されても永住権が発行されて新たな労働力として貢献できるのが半年以上先だとすると、なぜまだ復活しないのか疑問です。
また、最近オンタリオ州政府は、出身国のライセンス保持者が移民後にすぐに同じ職種で働けるようにプロセスを緩和すると発表しました。これは随分前から言われていたことで、今更という感じですが、移民後に1年のカナディアンエクスペリエンスがなくてもすぐにエンジニアとして、プラマーとして、エレクトリッシャンとして働けることになればその職種の人材不足解消に貢献すると思います。
短期的には就労ビザのプログラムを拡大すべき
2014年現在のアルバータ州知事のジェイソン・ケニー氏が移民省大臣だった頃に、雇用主はカナダ人や移民を雇用する努力が不十分であり、外国人就労者に労働力を頼りすぎているという理由から、外国人雇用の条件が急に厳しくなりLabour Market Impact Assessment(LMIA)の申請料も現在の1000ドルに上がりました。簡易プロセスも廃止されて一時的に就労ビザの取得が極めて難しくなりました。現在も基本的にその考え方は変わっておらず、人手不足が明らかな職種にも相変わらず同じ条件が課せられています。
そうした中で、ケベック州政府が連邦政府に先立って外国人一時就労者プログラムの条件を緩和する方向を発表しました。現在低賃金職種の外国人就労者は職場の全就労者数の10%が上限とされていますが、これを20%まで引き上げること、リクルート活動が免除される職種リストの大幅な拡大、更にキャッシャーやハウスキーパーなどのロースキルジョブについてもその適用を認める方針を打ち出しています。
外国人一時就労者プログラムの利用を拡大するために申請費用の無償化や条件の緩和に加えて、ひとまずはワーキングホリデーの促進やオープンワークパーミット適用の拡大、例えば、プライべートカレッジ卒業生にも卒業後の就労ビザ(PGWP)を認めるなど、Low Hanging Fruitにフォーカスすべきだと思います。