今回はカナダの日系企業が駐在員を受け入れる際に必要な就労許可証について最近の動向も含めてご説明します。
カナダの企業は国際市場における競争力を向上させるために、自社と資本関係にあるカナダ国外の親会社、子会社、関連企業などから企業駐在員を迎え入れることができます。就労許可証を取得するには、通常まずLabour Market Impact Assessment (LMIA) の取得が必要になりますが、昨年カナダ政府はこのLMIAの審査基準を厳しくしたため、これを免除されている企業駐在員用の就労許可証が外国人雇用のための手段として改めて注目されています。ではどのようなポジションが企業駐在員として認められるのでしょうか。
企業駐在員としての就労許可証取得が可能なポジションの一つは、エグゼクティブ(幹部職)とシニアマネージャー及びファンクショナルマネージャーです。シニアマネージャーというのは大きな組織のある一部門を統括したり、他のマネージャーやスーパーバイザーを管理・監督するポジションのことです。一方、ファンクショナルマネージャーは、必ずしも部下を持つ必要はありませんが、企業活動のある重要な機能を果たし日々のオペレーションの決定権を持つポジションになります。ここでは名前だけのマネージャーや、スーパーバイザーレベルのポジション、現場での生産やサービスの提供を主な職務とするポジションは除外されています。このポジションでは最長7年間まで駐在が可能となっています。
駐在員として可能なもう一つのポジションは、専門的知識の保有者(Specialized Knowledge Worker)です。昨年Specialized knowledgeについて、“専門知識は企業固有のものでかつ高度なものでなくてはならない”と再定義されました。この解釈はわかりにくいですが、単に高度な知識であるだけでは不十分で、カナダの労働市場ではもちろん、派遣元企業内部ですら限られたメンバーしか共有してない企業独自の製品やサービス、プロセスに関するユニークな知識であり、短期間で容易に移転することが不可能なものとされています。例えば、高度にカスタマイズされた新製品の開発者などが挙げられます。賃金レベルについては、カナダにおける当該ポジションの中間賃金を上回ることが必要とされています。尚、このポジションでは最長5年間の駐在が可能です。
最後に申請方法についてですが、在外カナダ大使館に駐在員用の就労許可証を申請し、審査に合格すると発行されるLetter of Introductionを入国の際に空港で提示し就労許可証を発行してもらう方法、カナダ雇用主がTemporary Foreign Worker Unit(TFWU)にLMIA免除のための申請を行い、Opinion Letterを取得してから空港で申請する方法、大使館やTFWUを通さずに直接空港で申請する方法の3つがあります。最後の方法は日本国籍者のようなカナダのビザ免除国出身者が健康診断の不要なポジションを申請する場合のみ有効です。いずれの方法にも一長一短があるのでケースに応じて検討する必要があります。