今回は現政権が2年前に公約に掲げた家族の再統合(Family Reunification)政策の進展について振り返ってみたいと思います。
自由党政権が成立してから早2年が経過しようとしています。振り返るとこの間もイミグレーションの法律やルールはめまぐるしく変わりましたが、自由党の移民政策に関する選挙公約の目玉であった家族の再統合は果たして進んだのでしょうか。
配偶者・コモンローパートナーのスポンサーシップ
カナダ政府は昨年の12月にファミリークラス(配偶者・コモンローパートナー)の申請書の審査期間を大幅に短縮することを約束しました。それまで国外申請は平均で16か月、国内申請は23カ月かかっていましたが、この発表時点での未審査ファイル及びこれ以降に提出された申請書について国内申請・国外申請の区別なく1年以内に審査を完了することを政府はコミットしました。政府のウェブサイトには現在もこの努力目標がプロセスタイムとして掲載されています。日本国籍者の場合、これまでも国外申請は比較的早く審査されていたのであまり実感はありませんが、最近になって弊社でも国内申請者が続々と審査完了の通知を受けるのを見ると、年末にかけて目標達成に近づきつつあることがうかがえます。
政府はプロセス期間短縮のためにいくつかの改善を試みました。必須ドキュメントが含まれていない申請書は“Incomplete”として返送され初めから審査対象外となり、複数の申請フォームの統合や、ペーパー申請のオンラインアカウントへのリンクが行なわれました。さらに、一定の条件を満たすローリスクの申請者に対しては必要なドキュメントの数が削減されました。これでメリハリの利いた審査が可能になったと思われますが、うがった見方をすれば、政府のイメージする伝統的な配偶者、コモンローパートナーの型にはまるケースを演出できれば審査が迅速に進むという点も否めないかもしれません。
条件付き永住権の廃止
配偶者、コモンローパートナーとしての申請者で、申請時に婚姻またはコモンロー関係が始まってから2年経過しておらず、共通の子供がいない場合は、永住権取得後少なくとも2年間は関係を維持し同居していなければならという条項が、今年4月に撤廃されました。これによってスポンサーによる虐待を受けても、また関係が既に破綻していても永住権維持のために我慢して同居を続ける必要はなくなりました。
両親、祖父母の呼び寄せプログラム
選挙公約通り、2016年より申請書受付数が5000から10000に引き上げられました。また、悪評の高かった先着順受付は廃止され、一定期間の応募者の中からランダムに永住権申請資格を与えるという試みが今年から始まりました。しかしながら、応募者の中には申請資格を満たしていない人が多数含まれていること、家族の複数のメンバーが同時にスポンサーとして応募することが認められているなど、オペレーション上の稚拙さが指摘されています。
同伴できる扶養家族の年齢引き上げ
移民申請において同伴できる子供の年齢が、19歳未満から22歳未満に引き上げられました。(というよりは、前政権が一度下げてしまった基準が元に戻されました。)取り立てて根拠のないこうした改訂に振り回される申請者の方はたまったものではありませんが、運悪く2014年8月1日から2017年10月23日の間に申請書を提出した場合は遡ってこれが適用されることはないということです。
カナダ在住の兄弟がいると有利
エクスプレスエントリーのスコア計算において今年6月にマイナーな改訂があり、カナダ人または永住権保有者の兄弟がカナダに居住している場合は追加ポイントを得られることになりました。これが将来、叔父、叔母、従妹にまで広げられるかどうかは政府のさじ加減ひとつです。
これら一連の改革は、移民を単に一個人のHuman Capitalとして捉えるのではなく、家族再統合によってその個人が経済的、精神的に支えられ、ひいては国の繁栄に繋がるという自由党の考え方を反映しています。ただこれが、単にエコノミック移民に偏っていた前政権の政策への反動なのか、過去に蓄積されたビックデータの分析に基づくものなのかは定かではありません。