カナダ移民申請の際には、原則として18歳になって以降連続して6カ月以上滞在した全ての国からの警察証明の提出を求められます。家族を持つ場合は本人だけでなく、配偶者や同伴資格のある18歳以上の子供の警察証明書も提出することになります。では、カナダ政府は移民審査にあたり犯罪歴をどのように評価し、永住権発行の可否を判断するのでしょうか。例えば、配偶者が過去に万引き(窃盗罪)で起訴されたことがある場合、主申請者本人の移民申請にも影響するのでしょうか。
移民審査においてオフィサーは、カナダ国外で犯した犯罪がその国でどのように処理され、実際にどんな刑罰を受けたのかについては問題にせず、むしろ、同じ犯罪をカナダ国内で犯した場合に、カナダのCriminal Codeに照らしてどのような刑罰が下される可能性があるかに焦点が当てられます。万引きを例にとると、カナダで5000ドル以下の万引きで起訴された場合、罰金ではなく2年以下の懲役となる可能性がある (Criminal Code 334条)ため、仮に日本での万引きが略式起訴で済んだとしても、移民法36条(2)(b)によりInadmissible(不適格)となり、移民申請が却下されことがあります。尚、主申請者本人ではなく前述した家族の一員に不適格者がいる場合も、家族全員が申請を却下されます。
しかしながら、有罪判決を受け、刑期を終えてから(罰金を科されただけの場合は罰金を支払った日から)10年を経過し、その間に他の犯罪を犯していなければ、Inadmissible(不適格)が克服されたとみなされます。これはRehabilitation(適格性の回復)と呼ばれています。ケースによっては10年を待たずに、刑期を終えてから5年後にはRehabilitationの申請を行うことができ、これが認められれば、永住権取得を早めることができます。
以上のように、犯罪歴が絡むケースは複雑です。仮に母国では10年以上の刑に処せられる場合であってもカナダにはそのような法律が存在しなかったり、軽微な犯罪として扱われている場合もあります。また、犯罪を犯した時期によってはRehabilitationが適用される場合もあります。したがって、犯罪歴があるからといって移民申請を諦める必要はありませんが、移民申請には大した影響はないだろうと勝手に解釈することも避けるべきだと思います。