カナダ連邦政府の移民・難民・市民権大臣にジョン・マッカラム氏が就任しまし。マッカラム氏は 政治家になる前は複数の大学で経済学の教授を務め、ロイヤルバンク・オブ・カナダ(RBC)のチーフエコノミストだったということです。住民の約60%を中国系が占めるマーカム・ユニオンビル選挙区の議員となってからは、同性婚の法制化に貢献、防衛省大臣として過去に負傷した軍人への補償を拡大するなど、人道主義的な政策に力を入れてきました。経済重視一辺倒だった前政権に対する反動とマッカラム氏の個人的信念が合致し、今後は難民問題やファミリークラスにフォーカスした政策の展開が予想されます。
マッカラム大臣の最優先事項は、選挙公約に掲げた年内 25,000 人(その後の修正で年内 10,000 人、来年2月末までに15,000 人)のシリア難民受け入れの実現です。パリの同時多発テロ事件における実行犯が難民に紛れて欧州入りした疑いが浮上していることから、セキュリティの重要性が再認識されています。政府は女性、子ども、家族を優先し、 独身男性の受け入れを当面見送るとしていますが、そ れでも 25,000人の安全チェックをたった数か月で行なうにはかなりのリソースが割かれることになると思います。前保守党政権は、シリア国内でマイノリ ティであるキリスト教徒を優先的に受け入れる政策を取っていたとされ当時国会で非難されましたが、ある意味では理にかなっていたのかもしれません。
家族重視も自由党の掲げる政策の柱となっています。ファミリークラスのプロセスタイム短縮、親・ 祖父母の受入れ数を倍増、エクスプレスエントリー(EE)に おいてカナダに兄弟姉妹を持つ申請者のポイントを追加加算、同伴できる子どもの年齢の再度引き上げ、配偶者・パートナーの永住権取得後2年間の同居要件撤廃などが優先実施事項として挙げ られています。
新政権は経済移民クラスについては多くを語りません。不透明と批判されるエクスプレスエントリーの システム、オフィ サーの裁量権濫用が野放しとなっている Labor Market Impact Assessment、留学生の移民への道が容易でない現状などにも、もう少し目を向けて欲しいと思います。また前保守政権が作り出した移民申請資格を満たすための数々の障壁について、その正当性が改めて評価されることを期待したいと思います。