2022年にはパンデミックも終息に向かいカナダのイミグレーションも平常に戻るだろうと誰もが期待していたのですが、オミクロン株の広がりで現状また先が見なくなってきています。こうした中で今年のイミグレーションの動向を予想するのは難しい作業ですが、昨年末に発表されたトリュードー首相から移民省大臣にあてられたMandate letter(政策のプライオリティーの指示書)を参考に今年の展望と予想されるイベントについて書き留めておきます。
エクスプレスエントリーの動向
カナダ政府は2022年に41万人の移民を受け入れる計画ですが、現在膨大な数の未審査ファイルを抱えているため、昨年の9月以降スローダウンしているエクスプレスエントリーの本格稼働開始は、多少ずれ込む可能性があります。その間に新しいプロファイルが提出され、申請者は語学スコアを上げてくるので、一旦ドローが復活するとカットオフスコアは比較的高い水準でスタートすると思われます。さらにオミクロン株の終息で渡航規制が緩和され、過去1年以上保留になっている連邦スキルワーカーにもインビテーションが発行されるようになると、カットオフはしばらくの間、高止まりすることが予想されます。ちなみに2022年1月4日時点で450点以上のスコア保持者5万2000人が既にプールで待機しており、一回のドローで発行されるインビテーションの数が3000~6000人とすると既にプロファイル提出済の450点以上のスコア保持者が一掃されるだけでも、半年近くかかることになってしまいます。後に述べるPRパスウェイプログラムで風穴を開けて欲しいところです。
Pathways to Permanent Residenceの拡大
今回のMadate Letterの中で注目されるのが、Expand pathways to Permanent Residence for international students and temporary foreign workers through the Express Entry system.という一文です。昨年のPRパスウェイプログラムはエクスプレスエントリーの枠組み外で新しく申請要件が設定され、ポストセカンダリープログラムの卒業生はカナダ経験クラス(CEC)の要件(カナダでの一年以上のスキルワーカーとしての職歴)を満たしていなくても申請することができました。申請方法や必要書類は受付前日の午後に発表され、受付開始の翌日には定員に達し締め切られました。もっとも、40000人の受付のはずがプログラムのバグで同時にSubmitボタンを押した複数の申請者が1人にカウントされて、最大受付数より7300人多く受け付けてしまったことが後で判明しました。
もともとエクスプレスエントリーを使うスキルワーカー移民の枠が年間11万人しかないのに、エクスプレスエントリーのプールにいる候補者を無視して多くのリソースを割いて即席で欠陥の多い、しかも、申請者にとってストレスフルなプログラムを作るよりは、エクスプレスエントリー登録者の中から選定する方が理にかなっていると思います。
2022年のワーキングホリデーは?
2021年11月12日に打ち切られた日本からのワーキングホリデー申請者へのインビテーションの数は年間940人にとどまりました。もともと割り当ては6500人あるにもかかわらず1839人がプールいたままインビテーションを発行されなかったようです。一方、韓国は4000人の枠に対して2136人、UKは5000人の枠に対して3614人発行されています。どうして日本が極端に少ないのか。あくまで憶測ですが、ワーキングホリデープログラムは、2国間の協定でお互いに同じくらいの数を受け入れることになっているため、日本に来るカナダからのワーキングホリデーが少なければ相応に数を調整されると考えられます。つまり、留学生や外国人就労者の入国が極端に厳しい政策を日本政府が今後も取り続ければ、カナダが渡航規制を緩和しても日本国籍者に対するインビテーションの数はさほど増えないかもしれません。
NOCコード(2021年バージョン)の導入
カナダ移民省は、カナダのイミグレーションシステムにおける職業分類 (Notional Occupation Classification) の2021年バージョンを導入することを発表しています。現在のバージョンはその職業に必要とされるスキルレベルに応じて0, A, B, C, Dと5つのカテゴリーに分類されています。新しいバージョンではその職種に必要とされるTraining, Education, Experience and Responsibilitiesを略したTEERを基に0, 1, 2, 3, 4, 5の6つのカテゴリーに再編成されています。
今回特に影響を受けるのはスキルレベルB職種で、TEER 2またはTEER 3のどちらかに振り分けられています。エクスプレスエントリーでカウントされる職種は現在のバージョンではNOC の0, A, Bに限られていますが、カナダ政府はTEER 0から3までをスキルワーカーと見なすのか、TEER 2までに限るのかについて今後の発表が注目されます。これまでスキルワーカーの職種と見なされていたのに、突然のカテゴリー変更で梯子を外すようなことを政府は行わないと信じています。