カナダで活躍する日本人第27回目は、ビジュアルアーティストのOkada Shogoさんをご紹介します。岡田さんはフランス語をゼロから始めてケベック移民プログラムのPEQから永住権を取得されました。現在はモントリオールを拠点にアーティストとして多様な活動をされています。
QLS:お久しぶりです。カナダに戻って来られた感想はいかがですか。
岡田:やっと戻って来れてほっとしています。10カ月くらい日本に居ました。2020年12月に一旦日本に戻ったあと、今年2月にPRが下りたんですが渡航規制で簡単には入国できず、トラベルドキュメントを申請して戻ってくるというかなりイレギュラーな展開になりました。
QLS:岡田さんがトロントのオフィスで契約されたのが2015年6月なので、かれこれもう6年以上のお付き合いになりますね。
岡田:そんなに前だったですかね(笑)。途中でPEQのフランス語要件が変わってこれ (認定校の修了証) もダメ、あれ (公式試験結果)もダメと言われた時は心配になりましたけど、基本的に僕はずっと美術の仕事をしていて忙しかったので、時間はかかりましたけどそんなに長くは感じなかったです。もちろん仕事のベースがモントリオールに既にできていたので、もしカナダを離れなければならなくなったらどうしようかというストレスは常にありましたね。
QLS:トロントからモントリオールに移られたあとの活動はどんな感じでしたか。
岡田:絵の方はマーケット的にもトロントがメインで、展示されているのもトロントやハミルトンのギャラリーだったりするので時々そのために戻ったりはしてましたけど、基本モントリオールがベースになりました。モントリオールは音楽が盛んなので音楽関係も少しやってそれに関連したイラストを描く仕事も多くやってました。
QLS:当時はPEQの指定プログラムを取るためにモントリオールに行ってくださいという感じだったんですが、モントリオールは実際住んでみていかがでしたか。
岡田:そうですね、最初は大丈夫かなと思いましたけど結構すぐ慣れましたね。モントリオールは一応バイリンガルなので、皆いざというときは英語を話してくれるので。1年くらいたってようやくフランス語にも慣れてきました。
QLS:岡田さんの場合はPEQのインタビュー練習の時も、現地の人が話すようにナチュラルに話されていたと弊社の亀谷も言ってましたけど、ゼロからどうやってフランス語を身につけられたんですか。
岡田:一応最初はコンコルディア大学の語学コースとかも通いましたけど週に1、2回で一回2,3時間だったので、まあ意味はありましたけどそんなにという感じでした。むしろ、こちらに引っ越してきてからも工房にずっと通っていたのと、シルクドソレイユで仕事を始めたのが大きかったと思います。働き始めたときはフランス語はそれほど話せなくて、実際皆の前で自己紹介した時は”こいつホンマに大丈夫か?“という顔されたんですが(笑)、フルタイムだったので無理してでも使わないと仕事にならない環境でした。企画部門とかは今は英語を話す人も多いようですが、僕の部署 (衣装の染色) はアーティストや職人系の人が多くて英語を喋る人があまりいなかったので基本フランス語でしたね。ケベコアが大多数で、あとはフランスから来ている人と中央〜南米系の人もいていい感じに混ざっていました。仕事をしながらも同僚は僕が間違えたりすると言い直してくれたり、わからないことがあったらその場で聞くと皆んな優しく教えてくれましたね。また、もともとモントリオールは日本人自体多くないので自然と現地の人と接する機会が多くなると思います。
QLS:なかなかそういうチャンスを得るのは難しいと思いますが、衣装の染色の仕事というのは岡田さんのそれまでの活動が生かせたということでしょうか。
岡田:僕は日本でシルクスクリーンをやっていたのでテクニック的には同じだったのでその経験が使えました。
QLS:今後の活動の予定はどうですか。
岡田:そうですね、版画関係は工房を借りないといけないので、今後もモントリオールが中心になると思います。日本では家の近くにあまり工房がなくてDrawingくらいしかできないので。あとトロントもいいんですが、最近家賃が高すぎて・・モントリオールも上がってきてはいますが、まだトロントの半分かプラスちょっとぐらいかなと思います。
それと永住権がとれたので、これからは色々なアーティストのためのGrant (助成金) にも応募できるようになったのが良かったです。ケベック州はそのGrantが結構あるんですけど、永住権を持っていないと応募できないものが多いんです。
QLS:最後の質問になりますが、これからカナダに留学、移住で来る人に何かアドバイスはありますか。
岡田:そうですね。僕は生活に関してはあまりこだわりがないので何でも大丈夫なんですが、カナダに来てちょっとこれは嫌だとか思うこともあるかもしれないですけど、でもあまりそういのはない方が暮らしていくのは楽かなと思います。例えば日本にあってこちらになくても、なかったらないでしかたないと割り切ることですね。
それと、僕の場合は友達とか知り合いづたいで世界が広がったと思います。例えば、日本では多少英語の勉強もしてたんですが、はじめてトロントに来た時は最初全く英語が通じなくて、それで工房に行き始めてからそこでリノベーションの仕事を紹介してもらったり、また別の人からの紹介で今度はケンジントンマーケットのカフェでも働かせてもらって、そこは接客だったので英語を喋る練習になりましたね。あと自転車(BMX)もやってるのでそのコミュニティーで、国籍関係なく一緒に遊んだりとかしているうちに知り合いも増えた感じですね。
トロントからモントリオールに移るときもそうだったんですけど、トロントの工房で働いているときに、たまたまその工房と交流のあるモントリオールの工房から来ているアーティストがいたんですね。それでその人と友達になっていたので、モントリオールに行くことになったときは、最初に泊まるところを紹介してもらったり、シルクドソレイユの仕事もその人から紹介してもらいました。困ったときは周りに聞きまくることですかね(笑)
<インタビューを終えて>
岡田さんの作品は抽象的ですが、中にはタイトルを見てなるほどという作品もあります。全ての作品には最初にモチーフがあって、一旦それをバラバラに分解して再構成するという作業を行うそうです。ちょうど今トロントでFerry Terminal Billboard Project というのが行われていて2022年3月まで岡田さんの作品の公共展示も見ることができます。