2025年はカナダ移民制度の「転換点」
2025年のカナダ移民制度は、単なるルール変更ではなく、制度全体の方向性が大きく変わった年となりました。永住権、一時滞在(就労・留学)、市民権、難民制度まで幅広い分野で改正が行われ、申請者だけでなく雇用主や教育機関にも大きな影響を与えています。
本記事では、2025年に起きた主要な移民制度の変化を解説します。
市民権法改正(Bill C-3)|「国外出生1世代限り」ルールの撤廃
2025年の大きな前進の一つが、市民権法改正案 Bill C-3です。これまで問題となっていた「国外出生は1世代まで」という制限が見直され、親がカナダに**実質的なつながり(出生前に1,095日以上のカナダ滞在)**を証明できれば、2世代目以降でも市民権取得が可能となる内容です。
いわゆる Lost Canadians 問題への対応でもあり、長年の法的課題に一定の解決策が示されたと言えます。
移民・国境強化法案(Bill C-12)|制度効率化と権限強化への懸念
現在議論を呼んでいるのが Bill C-12(移民・国境強化法案)です。この法案では、「公共の利益」を理由に申請やビザを一括取消できる権限が政府に付与される可能性があります。
また、難民申請には入国後12か月以内という期限が導入され、期限を過ぎるとIRBによる正式審理を受けられなくなります。
定義が曖昧な点も多く、今後は違憲訴訟が増える可能性が指摘されています。
就労ビザと家族帯同の要件強化|一時滞在者削減の明確化
2025年は、一時滞在者数を抑制する方針が明確になりました。
PNP(州推薦)候補者向けの2年間オープンワークパーミット特例は延長された一方で、配偶者・家族の就労許可要件は大幅に厳格化されています。外国人労働者の配偶者は、原則として **TEER 0〜1(高度職)**または一部の人手不足分野に限定され、子どものオープンワークパーミットは廃止されました。
留学生の配偶者についても、修士・博士課程などに限定され、家族帯同は以前より難しくなっています。
バックログ深刻化とフラッグポール廃止の影響
IRCCは処理時間表示をより現実的な形に変更しましたが、その結果、処理期間が10年以上と表示されるプログラムも出ています。Maintained status(旧Implied status)が長期化し、医療保険や渡航制限など、生活面への影響も深刻です。
さらに、**フラッグポール(国境での就労・就学許可更新)**は事実上全面廃止され、更新は原則オンラインのみとなりました。迅速な切替ができなくなり、雇用主・労働者双方に影響が出ています。
Express Entryの大きな変更|雇用オファー加点の廃止
2025年3月以降、Express EntryではArranged EmploymentによるCRS加点が廃止されました。
特に上級管理職層では最大200点の減点となり、永住権取得戦略の見直しが必要になっています。
全体の招待点数も依然として高水準にあり、EE単独での永住権取得は難易度が上昇しています。
州推薦プログラム(PNP)の再編と回復
2025年はPNPの割当が一時的に半減しましたが、2026年以降は年95,000枠まで回復する計画が示されています。
オンタリオ州では Employer Portal が導入され、申請プロセスは明確に雇用主主導型へ移行しました。
フランス語話者優遇とケベック移民制度の激変
2025年は、フランス語話者の優遇が一段と鮮明になった年でもあります。
ケベック州外でもフランス語カテゴリーのExpress Entryドローが急増し、CRS点数も他カテゴリーより大幅に低く設定されています。
一方、ケベック州ではPEQの廃止、フランス語要件の強化、低賃金LMIAの停止など、大きな制度再編が行われ、非フランス語話者にとって非常に厳しい環境となっています。
2025年は「量」から「質」へ|戦略的な移民計画が不可欠
2025年のカナダ移民政策は、「多く受け入れる」時代から、「選別し、定着できる人材を優先する」時代へ明確に移行しました。今後は、自身の属性(年齢、語学力、職種、居住する州)を考慮し、複数ルートをも組み合わせた戦略設計が必要になると思われます。

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