今回は就労ビザを取得するために必要なLMIAについて知っておいた方がよい点を取り上げます。
ワーキングホリデーで渡加後、カナダでの生活が気に入ってそのまま滞在を続けたいと思う人は多いですが、その中でもカナダで雇用されるチャンスに恵まれ、現在の仕事をもう少し続けたい、移民申請に必要なカナダでの就労経験を積みたいと考える人は、就労ビザへの切り替えが必要になります。就労ビザの取得は決して容易ではなく、最初のステップとしてまず雇用主からLabour Market Impact Assessment (LMIA)を申請してもらい、そのポジションに外国人を雇用することをカナダ政府から承認してもらう必要があります。
雇用主のサポート意思
既に外国人労働者を雇用した経験がある場合を除き、一般的に雇用主はどうやったら外国人が就労ビザを取得できるのかについて知らないことが多く、LMIAという言葉自体耳にしたことがなかったり、“書類を準備してくれたらサインだけはする”などと安易に考えるオーナーもいるようです。また、元々方針として就労ビザをサポートしない会社があることや、組織が大きいために直属の上司にはサポートの決済権がないことが後になってわかる場合もあります。先々就労ビザの取得を目指す人は、時間を無駄にしないためにも少なくともその会社に就労ビザのサポート実績があるかどうか事前に情報収集する必要がありそうです。また、一旦就職した後は、雇用主にとって就労ビザサポートのためのコストと時間をかけるに値する価値をその会社に提供しているかどうか自問自答してみることも必要です。いうまでもなく、雇用主にもメリットがなければサポートはまず期待できません。
申請するポジション
LMIAでは文字通りカナダの労働市場に与えるインパクト、つまり、申請するポジションがカナダ人や永住権保有者の仕事を奪うことにならないかどうか、あるいは、現在カナダにはない新しい技術の移転や新規雇用の創出など、労働市場にプラスの影響を与えるかどうかが審査されます。したがって、特定のスキルや経験を必要とせず短期間のトレーニングで足りてしまうロースキルのポジションでは、余程の人材不足がない限りLMIAを取得するのは困難です。また、以前は英語、フランス語以外の言語能力を雇用の必須条件に加えることができましたが、現在はよほどその必要性を正当化できなければ、言語を理由に外国人を雇用することは認められていません。日本語が話せることが唯一の理由で雇用されている場合は、就労ビザ取得の可能性は低いと考えるべきかもしれません。
賃金レベル
LMIAを承認されるにはその職種の当該経済区における中間賃金を上回る賃金をオファーされていなければなりません。それまで最低賃金近くで雇用していた外国人の賃金を大幅に上げなければならなくなるケースもあると思います。また、賃金は固定給である必要があり、コミッションやボーナス、チップなどを含めることはできません。書類上はオファーしたが実際には支払わなくてもいいなどという時代はとうに終わり、カナダ政府のランダム・インスペクションによってLMIAを発行した雇用主に対して、約束した賃金が実際に支払われているかどうか、後日厳しい検査が行われることになります。
外国人就労者の従業員比率
現在LMIAにはいくつかのストリームがありますが、そのうち低賃金ポジション(州の中間賃金より低い額を提示されているポジション)で就労するためのLMIAの審査では、職場におけるフルタイム(相当)のスタッフに占める外国人就労者の割合(CAP)が定められています。この計算方法は従来より簡素化されましたが、誰を分子に含めるべきか未だに頻繁に修正がおこなわれ複雑怪奇であり、英語がネーティブのカナダ人でさえ何度読んでも理解困難なものになっています。尚、従業員数が10人を下回る場合など、いくつかのケースではこのCAP計算が免除されています。
以上、LMIA取得は一筋縄ではいきませんが、現在カナダは全体的に失業率が下がりあちらこちらで人材不足の声が上がっており、就労ビザ取得には絶好のチャンスといえます。カナダで将来のキャリアを考える人には是非チャレンジして欲しいと思います。